平均値と中央値
金融広報中央委員会が公表する世論調査によると、令和3年の70歳以上・2人以上世帯の貯蓄平均額は2209万円だそうです。この数字は、政府が推奨する夫婦二人の老後資金の目安である「2000万円」以上を達成できているようにみえます。しかし、これは「平均値」であり、少数の富豪が平均金額を押し上げている可能性があります。
そこで、「中央値」でみてみると、真ん中にくるのは「1000万円」で、2000万円保有しているのは、全体の34%、金融資産非保有は18%となりました。
このことから、ここでは「平均値」より「中央値」の1000万円の方が、実態に近い数字であると思われます。
統計を出す際に用いられる「平均値」と「中央値」ですが、それぞれにデメリットとメリットがあります。
「平均値」は全てのデータを足してデータの数で割った値になります。この方法は、値を出しやすく、データ全体の推移が追いやすいので、月毎や年毎の変化を知ることが比較的簡単ですが、外れ値の影響を受けやすいため、真ん中から大きくずれてしまう可能性があります。
「中央値」は、全ての値を小さい(大きい)順に並べ、真ん中にくる値を出す方法です。外れ値に左右されず実態に則した中央のデータが出ますが、求め方が複雑で、全体の値が反映されていないため、数字の変化が分かりづらいというデメリットがあります。
「平均値」はどこまでのデータを加算するかによって、値を操作しやすいため、求人広告などで、平均給与額を多く見せる手法として使われ、問題になっています。
そのため最近は、調査の内容によっては、「平均値」だけではなく、「中央値」を記載することで、実態に近いデータを表示するところもあります。
これを踏まえると、上記のような貯蓄額や年収などは、「中央値」で出した方が、現在の世の中の状況を把握しやすいかもしれません。
2022年11月15日 12:45